夕暮れの原宿。竹下通りの匂いとすれ違う若い人たちの笑い声、路地に差し込むオレンジの光。その一角で、いつも視界に入っていたブランドの看板が静かに消えると、街の風景は少しずつ変わっていく。
今日のポイント(3つ)
- トーガ原宿店と古着屋TOGA XTCの閉店は、個店の採算悪化だけでなく「街のキュレーション拠点」の変質を示すシグナル。
- 要因は複合的:インバウンド回復の遅れ、原宿中心部の高い賃料、ECや中古流通の浸透が物理店の役割を再定義している。
- 解決策は単なるコスト削減ではなく、物理店を“体験・コミュニティ”のハブに再設計すること。小規模ショールームやポップアップ、リユース窓口、会員制スタイリング等が具体案。
閉店は終わりではなく“転換”の合図
ここ数年、原宿は観光客の回復に頼ってきた面がある。ところが、国際的な往来が完全に戻らないままの時期もあり、固定費の高い都心の旗艦店は厳しい。そこに追い打ちをかけるように、ECと中古(リセール)市場の成長が進み、商品が店舗を介さずに循環するルートが増えた。
トーガの例は、ブランド側が実店舗の「販売」以外の役割を見直す必要があることを教えてくれる。原宿の一角がただの売り場であることをやめ、街の個性やコミュニティを生む“場”として再設計する試みが求められているのだろう。
物理店を“売る場”から“体験のハブ”へ:実践的な再生モデル
ここからは、コストを抑えつつ原宿らしさを残す具体案を挙げる。どれも実行可能性を重視したものだ。
1) 小規模ショールーム化(予約制・サンプル中心)
- 在庫を大量に抱えず、季節ごとのキービジュアルやコレクションの“見せ場”に特化。来店はオンライン予約制にして顧客体験を濃くする。
- 試着はスタイリングの時間として価値化し、パーソナル接客や写真撮影サービスを付加する。
2) 期間限定のキュレーションマーケット(ポップアップ連携)
- 常設の代わりに、月替りや週替りで企画を入れ替える。地元のヴィンテージ店や若手デザイナーとコラボして来訪理由を作る。
- コミュニティイベント(トーク、ワークショップ、スワップ会)を定期開催し、リピーターを育てる。
3) 常設のリユース窓口+地元セラーとの連携
- ブランドの公式リユース窓口を店舗内に設置。買い取り・下取りを行い、循環モデルへの導線を作る。
- 地元の古着屋と協業して、キュレーション棚を共同運営することで在庫リスクを分散する。
4) 会員制スタイリング・コミュニティ
- 会員に限定したスタイリングサービスや先行販売、限定イベントを提供。安定した収入源と長期的な顧客関係を目指す。
- デジタルプラットフォームと連携し、会員同士のスタイル投稿や交換会を促進する。
原宿らしい“場”を残すために、今できること
街の風景を守るためには、ブランドだけでなく地元店舗、消費者、自治体の協力も重要だ。以下は今日から取り入れられる現実的なアクションリストだ。
今日からできる取り入れ方
- 小さな規模でポップアップを試す:週末だけのイベントから始めて反応を検証する。
- 既存のヴィンテージ店やカフェと一緒に企画を作る:相互の客層を共有しコストを下げる。
- オンラインでの会員コミュニティを作る:実店舗の来店体験を補完し、リピーターを増やす。
- リユースを促す窓口を設置:下取りや買い取りで在庫回転を早める。
- イベントで“体験”を売る:ワークショップやスタイリング相談など、来る理由を作る。
編集部の動きとこれから
私たち編集部も、原宿の“場”を記録し、再生の事例を追っていく予定だ。今春からは地域ベースのポップアップ連携や、ヴィンテージショップとブランドの共同企画の追跡取材を始める。成功事例を紹介し、現場で実践できるヒントを読者に届けたい。
おわりに:物理店は消えるのか、変わるのか
トーガの原宿店閉店は寂しいニュースだが、同時に街が刷新されるチャンスでもある。大事なのは“何を残すか”ではなく、“どのように残すか”。原宿らしいカルチャーと出会いの場を手堅く、そして創造的に再設計していくことが求められている。
東京の街角は常に移ろう。だけど、そこにある人や出会いの機会が続く限り、原宿はまた新しい形で誰かの“好き”を育てていくだろう。
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