夕暮れの原宿駅前。ネオンがやわらかく路面店を照らす中、若いスタッフが手早くウィンドウを整え、近くのカフェで面接の準備をしている。東京の街は今日も、人とブランドがすれ違いながら新しい仕事の形を探している。
今日のポイント(3つ)
- 学生の就業意識は「転勤なし」「安定性」「包括性(インクルージョン)」が最優先。
- 従来の地方配属前提や本社集中型のジョブローテは、東京での人材確保に限界がある。
- 旗艦店や原宿拠点を“採用/育成の場”に再設計する「都市戦略型採用」が有効。
状況整理:なぜ今、東京での採用設計が鍵になるのか
最近の調査では、ファッション業界を志す学生が最も重視する条件の一つが「転勤なし」であることが明らかになりました。東京はブランドと若手クリエイター、専門学校や大学、媒体が集積する核である一方、生活コストや働き方志向の変化によって、「地方へ行く前提」の採用設計は学生のニーズと乖離してきています。
東京での採用に失敗すると、旗艦店の運営力やクリエイティブの継続性に直ちに響きます。たとえば旗艦店の陳列や企画が回らなくなればブランドの顔が揺らぎ、若手クリエイターの育成機会も減る。つまり、採用はもはや単なる人事の仕事ではなく、都市におけるブランド戦略そのものです。
切り口:採用を“リテール/都市戦略”に変える
ここで提案したいのは、採用を小売戦略や都市戦略と一体化する考え方です。旗艦店や原宿の拠点を単なる販売チャネルとしてではなく、「働ける場=キャリアの入口」として設計し直す。具体的には以下の要素が考えられます。
都市限定採用/勤務地固定のポジション設定
- 東京勤務限定の正社員ポストを設ける(転勤不可を明示)。
- 勤務地固定ながらキャリアパスはデザイン/商品企画/EC運営など横断的に用意。
旗艦店を「店舗×業務スペース」に再構築
- 客席や試着スペースの一部を、クリエイティブ作業やミーティング用の共有スペースに転用。
- 店員が接客だけでなく企画立案やSNS制作を実践できるワークフローを組み込む。
大学・専門学校との実務連携プログラム
- カリキュラムに実地研修を組み込み、旗艦店での短期プロジェクトを単位化。
- 教員・学生・ブランドの三者で評価基準を作り、採用ルートにつなげる。
実際の導入例(イメージ)
- 原宿旗艦店A社:午後は一般客対応、午前は学生向けのワークショップと社内プランニング時間を設定。参加学生は店舗運営に関わりながら研修単位を取得。
- 表参道ブランドB社:東京限定の正社員枠を設定。住宅支援や地域手当を付与して生活コスト差を補填。
- 渋谷のポップアップ:店舗兼シェアオフィスとして短期雇用者を募集。実務でのスキルが可視化され、成果に応じた正社員化の道筋を用意。
今日からできる取り入れ方(実務レベル)
小規模な施策から始めれば、リスクは抑えつつ効果を確認できます。以下は今日から取り入れられる具体案です。
- 募集要項に「転勤なし」「勤務地限定」を明記する。学生が最初に見る情報を変えるだけで反応は変わる。
- 月1回の学生向け店内見学会とワークショップを定常化する。学生のエンゲージメントを上げる手軽な入口になる。
- 店舗の一角を“プロジェクトデスク”に。SNS用撮影や小規模なデザイン作業ができるよう備品を整える。
- インターンから正社員化までの評価指標を事前に提示する。透明性は安心に直結する。
- 地域手当や住宅補助のパッケージを試行。生活コストに配慮する姿勢は採用の決め手になりやすい。
期待される効果と留意点
期待できる効果は、採用の母集団質の向上、旗艦店運営の安定、クリエイティブチームの即戦力化などです。ただし、都市特化の施策は社内のジョブローテ設計や評価システムと整合させる必要があります。地方拠点との均衡、社内の異動希望者への配慮も忘れてはいけません。
まとめ
東京はブランドの顔であり、人材の宝庫でもあります。学生が「転勤なし」「安定」「インクルージョン」を重視する背景を見過ごすと、旗艦店の現場力や一貫したクリエイティブを維持できなくなります。採用を「都市戦略」の一部として捉え、旗艦店や原宿拠点を働ける場=学びの場として再設計すること。小さな実験から始めて、都市特化型の雇用パッケージを整備していく。これが、これからの東京でブランド競争力を保つ現実的な道です。
今日から一歩:まずは旗艦店での見学会を月次化してみませんか?
興味があれば、事例紹介やテンプレート(募集要項/地域手当モデル)をまとめた資料も用意します。東京の現場で試せる施策から始めて、採用を都市戦略に変えていきましょう。
— 東京スタイル / TokyoSutairu